じぶん列車~小さな車窓から見えるもの~

産業カウンセラー。日々感じたことを、感じたままに書きとめる。目的地は決めず、その時々の関心事、景色や出会いを味わいます。

自己呈示の心理学理論<その3>なぜ「努力しない自分」「不利な状況をつくる自分」が出現するのか?

前回のブログでは、事後的にイメージを維持・回復するための「釈明」について取り上げました。

今回は、それとは異なり、事前にイメージを守るための自己呈示として、「セルフハンディキャッピング」について紹介します😊

試合前から始まる「負ける理由探し」~

例えば、テニスの試合で優勝を目指して練習を重ねてきたとします🎾

自分の努力を信じたい気持ちはあるものの、「強い選手はたくさんいる」という不安も拭えません。

気持ちも落ち着かず、今週は練習を軽めにしておくか。

試合当日、思うようなプレーができず、相手の素晴らしいプレーを目の当たりにすると、「負けるかもしれない」という恐怖が迫ってきます💦

このとき、心の中では「相手の方がもともとレベルが高かった」「今週は、本気で練習できていなかった」「最近、体調が優れなかった」など、さまざまな「負ける理由」を考え始めるのです。

そして、試合を観ていない友人から「どうだった?」と聞かれたときの答えまで、思考を巡らせている自分に気づきます💦

<セルフハンディキャッピングとは?>

成功の確信が持てない状況で、あらかじめ失敗した際の言い訳を準備し、自分に不利な状況を作り出す行動や認知のことを「セルフハンディキャッピング」と呼びます。

成功すれば「困難を乗り越えた」として自尊心を維持できるという、巧妙な自己呈示・心理戦略でもあります。

<セルフハンディキャッピングの種類>

セルフハンディキャッピングには、大きく分けて 「主張的セルフハンディキャッピング」「獲得的セルフハンディキャッピング」 の二種類があります🧐

・主張的セルフハンディキャッピング: 他者に対して、自分が不利な状況にあることを事前にアピールする。

例:「初めていくお店で、その駅は降りたことがないから迷うかも。」

・獲得的セルフハンディキャッピング: 実際に自ら不利な状況を作り出す。

例:試験前にあえて勉強せず、「準備不足だったから」と説明できるようにする。

<セルフハンディキャッピングの目的>

セルフハンディキャッピングは、主に以下のような目的で行われます。

(1)失敗の責任を能力以外の要因に転嫁する

「努力しなかったから、結果を残せなかった」と考えることで、自分の能力不足を直視せずにすむ。

(2)成功時の評価を高める

「不利な状況でも、結果を残せた」と言えれば、さらに高評価を得られる。

(3)他者からの評価をコントロールする

「本気を出せば、できる・やれる」というイメージを保ち続けることができる。

<助ける行動にも潜むセルフハンディキャッピング!?>

人を助けようとする行動の中にも、自分の能力を高く見せたいという利己的な動機が潜んでいることがあります💦

例えば、「手伝おうか?」と申し出る行為には、「助けることで有能な人間だと思われたい」という欲求が働いています。

もし失敗したとしても、「助けようとした姿勢」は評価されるため、自尊心が傷つくリスクを減らせるのです。

それでも、筆者個人的には「手伝おうか?」と言える人でありたいなぁと(汗)。

<自尊心の高さとセルフハンディキャッピングの違い>

自尊心の高さによって、セルフハンディキャッピングの取り方が変わります。

自尊心が高い人:周囲に「今日は調子が悪い」といった言い訳を事前に伝える

(➡主張的セルフハンディキャッピング)。

自尊心が低い人:努力を避けたり、不利な状況を意図的に作り出す

(➡獲得的セルフハンディキャッピング)。

<まとめ✍>

セルフハンディキャッピングは、自己評価を守るための自己呈示・心理戦略ですが、

長期的には成長の妨げになる可能性があります。

結果がどちらに転んでも、こころのダメージが軽減できるとも言えますね。

自分に甘ーい(苦笑)。

わたしたちは、能力がないと他者から評価を受けることに、猛烈な恐怖を感じているということを強く考えさせられます。

自分を信じて、何事にも全力で取り組める人は、本当に尊敬しますね✨

努力の天才と言われるイチローさん❤️

・何かを長期間、成し遂げるためには考えや行動を一貫させる必要がある。

・結果が出ないとき、決してあきらめない姿勢が、何かを生み出すきっかけをつくる。

心に沁みる名言の数々・・・

努力をせずとも、夢を叶えている人もいるでしょう(羨ましい)。

多くの人にとって、自分の思うような成果は、そう簡単には得られるものではなく💦

全力で取り組んだプロセスが、いつか花開くときもあると信じて✨
「ベストを尽くせる人」を目指しましょう!

と、筆者も自分に言い聞かせております(笑)。