じぶん列車~小さな車窓から見えるもの~

産業カウンセラー。日々感じたことを、感じたままに書きとめる。目的地は決めず、その時々の関心事、景色や出会いを味わいます。

「自分らしさ」と「周囲からの期待」、どちらを優先するか?~自己モニタリング・自己不一致理論~

ーあなたは空気を読む派?読まない派?ー

会議やグループディスカッションなどの場面で、言いたいことがあっても「これを言ったらどう思われるだろうか??」と考えすぎてしまったり💦

あるいは、「本当は言いたいけれど、場の空気を壊したくないから、やめておこう」と、口を紡いでしまったり💦

そんなとき、私たちは無意識のうちに自分の振る舞いを調整しているのです。

<自己モニタリングとは?>

自己モニタリングとは、周囲の反応をどれくらい意識し、それに応じて自分の行動を変えるかを示す特性です。

この概念は、心理学者マーク・スナイダー(Mark Snyder)によって提唱されました。

スナイダーは、自己モニタリングの高い人は社交的で適応力がある一方で、低い人は自分の価値観を貫きやすいことを指摘しました👀

  周りの反応をよく観察するタイプの人(高自己モニタリング者)

自分のスタイルを貫くタイプの人(低自己モニタリング者)

特徴 状況に応じて柔軟に振る舞いを変える 自分の価値観を貫きやすい
社会的評価 他人の目を強く意識し、印象を良くするのが得意 周りの評価を気にせず、一貫した自分を保つ
メリット 人付き合いがスムーズで適応力が高い 自分の信念や考えを大切にする
デメリット 他者の期待に応えようとしすぎてストレスを感じやすい 周囲とのズレを感じることがある

どちらが良い・悪いというわけではなく、それぞれの特徴を理解し、バランスを取ることが大切です。

<自己モニタリングと自己不一致の関係>

自己モニタリングの特性は、心理学者 エドワード・T・ヒギンズ が提唱した 自己不一致理論 にも関係しています。

ヒギンズは、人の自己概念を3つに分けました🧐

現実自己:自分が思う「今の自分」

例:「私は人前で話すのが苦手だ。」

理想自己:なりたい自分、憧れの自己像

例:「自信を持って話せて、周囲と自然にコミュニケーションが取れるようになりたい。」

義務自己:「こうあるべき」という社会的義務や周囲の期待

例:「職場や学校では積極的に発言し、リーダーシップを発揮するべきだと考えられている。」

<自己モニタリングの高さによって、これらの不一致の影響が変わってきます>

自己概念 周りの反応をよく観察するタイプの人 (高自己モニタリング者) 自分のスタイルを貫くタイプの人(低自己モニタリング者)
現実自己👉 「今の自分はこういう人間だ」 状況に応じて変動しやすい 一貫した自己像を持ちやすい
理想自己👉 「こんな自分になりたい」 他者の期待に影響を受けやすい 自分の価値観を重視する
義務自己👉 「こうあるべき、こうしなければならない」 社会的期待を敏感に察知し、プレッシャーを感じやすい 周囲の期待より自分の考えを優先しやすい

周りの反応をよく観察するタイプの人は、理想自己や義務自己とのギャップを強く感じる ため、ストレスを抱えやすい傾向があります😥

一方で、自分のスタイルを貫くタイプの人は、自己不一致のストレスをあまり感じないものの、社会的適応に苦労することがある かもしれません😒

<自己モニタリングのバランスを取るには?>

周りの反応をよく観察するタイプの人向けの対策

★他人の期待をすべて受け入れない

・周囲の目を気にしすぎると、ストレスの原因になります。

・「本当に大切な期待は何か?」を考え、取捨選択することが重要です。

★「自分はどうしたいのか?」を考える時間を作る

・1人の時間を大切にし、自分が大切にしたい価値観や人生の優先順位を整理することで、周囲の評価に振り回されにくくなります。

例えば、自分が本当に大切にしたいものは何かを紙に書き出したり、信頼できる人と話して意見を整理することで、より明確な指針を持つことができます。

自分のスタイルを貫くタイプの人向けの対策

★状況に応じて振る舞いを調整する意識を持つ

・自分らしさは大切ですが、環境に適応する力も重要です。

・例えば、相手の話をよく聞きながら少しリアクションを増やしたり、柔らかい表情を意識するだけでも、周囲との関係がスムーズになります。

★他者の視点を取り入れる

・周囲の人がどんな気持ちでいるのかを考えてみることで、コミュニケーションの質が上がります。もしこれが難しいと感じるなら、まずは相手の表情や声のトーンに注目することから始めてみましょう。

また、相手に質問を投げかけたり、共感の言葉を使うことで、自然と相手の気持ちに寄り添いやすくなります。

<まとめ✍>

筆者は、どちらかと言えば、高自己モニタリングの傾向が高いと感じます。

特に10代・20代の時は、顕著でした!!

一見、社交的に見られますが、相手の言葉をつないで話しているだけ、言葉にしたくても、心の中だけで唱えるだけ、ひとり空回りで疲れていた💦

低自己モニタリング者に、憧れがあります(苦笑)。

”ゆずる自分”・”ゆずれない自分”の両方が、必要ですよね。

エドワード・T・ヒギンズの 自己不一致理論 によれば、「現実自己」と「理想自己」や「義務自己」とのギャップが心理的ストレスを引き起こすとされています。

例えば、「理想自己」とのギャップが大きいと、『思い描いている自分になれない』という焦燥感や自己否定感が生じることがあります。

筆者も若い時は、何度も悩まされた記憶があります💦

不思議と年齢を重ねる中で、理想自己の設定が下がっていったような(現実的に考えるようになった?諦め?-笑)。

一方で、「義務自己」とのギャップが強いと、『期待に応えなければならない』というプレッシャーや罪悪感がストレスにつながることがあります。

自分をサポートしてくれた人たちに感謝の気持ちを込めて、期待に値する自分にならねば!と鼻息荒くしていた頃もありますが、

他人の期待ほど、無責任なものはないと思う今日この頃😅

相手の期待は、適度に感謝しながら、さらりっと交わしましょう(笑)。