”伝え方”に関する本もたくさん書店で見かけますが、プレゼンテーションに限らず、日常から、何気ない一言でも、相手に気持ちよく行動に移してもらうには、ちょっとした”伝え方の工夫”が必要だなぁとつくづく思います。
トイレでも、当たり前に見かけるポスター✨
「いつもきれいに利用してくれて、ありがとうございます。」
「汚さないでください」や「汚したら罰金」よりは、感謝されるような表現の方が、協力したい気持ちになるものです。
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「遅刻しないで」と伝えたのに、また遅れてきた😱
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「騒がしい教室で、静かにして」と訴えても、好き勝手におしゃべり
実は、「〜しないでください」と言われるほど、逆にその行動をしたくなってしまう・・・そんな心理的現象が、私たちの日常には数多く潜んでいるのです。
なぜ「しないで」と言われると、したくなるのか?
<1. 皮肉過程理論(Ironic Process Theory)>
早速、実験をしてみましょう👀
可愛いですよね・・・💕
「今から、パンダのことを考えないようにしてください」
いかがでしょうか?
「パンダのことを考えないで」と言われても、頭の中は、かわいいパンダちゃんで溢れていませんか?(笑)。
これ、仕方がないことなんです。
「何かを考えないようにすればするほど、かえってそのことが頭から離れなくなるいう現象です。
例えば、禁煙やダイエットなども、「タバコを吸わないようにしよう」「食べないようにしよう」と強く意識すると、逆にタバコや食事のことばかり考えてしまい、うまくいかないことがあります。
<2. 心理的リアクタンス(Psychological Reactance)>
自由を奪われると、人は本能的に反発する。
たとえば、「スマホ見るな」と言われると、むしろ見たくなる💦
「駆け込み乗車は、お止めくださーい」と言われると、一斉に駆け込んでしまう😅
✅現象が発生するまでのプロセス
① 自由の認識
人は、自分が自由に選択できる状態を好み、それを当たり前の権利として受け止めています😊
② 自由への脅威
他者や環境によってその自由が制限されると、人はそれを「脅威」と感じ、違和感を覚えます😥
③ 反発する感情
自由が脅かされることで、怒りや不満、不安などの感情が芽生えます😡
④ 行動としての抵抗
人は失われた自由を取り戻そうとし、意図的に制約に反抗する行動を取ることがあります。たとえば、禁止されたことをあえて行ったり、制限を加えた人に対して反発したりすることなどがあげられます🤬
人間は、無意識に自分の人権を守ろうとする心理が働くのですね。
3. カリギュラ効果(Caligula Effect)
この先って、何があるのだろうか?
人間は、好奇心の塊です🎵
そう、これもまた、禁止されると、かえって気になる🤔
かつて過激な内容で上映禁止になった映画『カリギュラ』が、かえって注目を集めたことから名づけられたこの効果です。
「関係者のみ」「マル秘」と書いてあると、見たくなりますよねー(笑)。
「押すなよ、押すなよ」のダチョウ倶楽部の世界にも近い!?
このような心理的現象を考えると、わたしたちは相手に明確にやめてほしいことを伝えたり、必要な注意を伝える努力はしていますが、相手はやめるどころか、むしろ言動の強化につながる”伝え方”をしてしまっている可能性があります。
<どのように伝えれば良いのか?>
ここで有効なのが、肯定的な言い換えです👀
「やめて!」「~しないでほしい」ではなく「〜してくれると嬉しい、助かる」、相手のメリットを追加した伝え方に変えるだけで、与える印象が変わります。
シチュエーション | NG表現 | better表現 |
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作業中に雑談が多くて集中できない |
「うるさくしないで」 「騒ぐな」 |
「集中して作業できるように少し静かにしてくれもらえると助かります」 |
報連相が不足している |
「ちゃんと報告して」 「また報告が抜けた」 |
「進捗を共有してもらえると、安心してサポートできるよ」「報告が聞けて嬉しかったです」 |
約束を守らない | 「遅れないで」「ドタキャンしないで」 | 「予定通り来てもらえると、みんなが喜びます」「一緒にスタートできます」 |
資料が雑で 読みづらい |
「字がきたない、こんな雑に書かないで」 | 「もう少し丁寧に書いてくれると、内容が伝わりやすくなるよ」「一緒に情報を整理してみましょうか」 |
<まとめ✍>
「注意する」ことは時に必要ですが、それ以上に大切なのは伝え方の工夫です。
そんな筆者も、「あれっ?今の伝え方は、ネガティブに伝わっていないかな??」と、自問自答する日々です(苦笑)。
「しないで」と伝えたくなるときこそ、人の心の反応を知っておくことで、無用な対立や誤解を防ぐことができます。
これらの心理現象を総合すると、「〜しないで」という否定命令は、
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かえってその行動を意識させ(皮肉過程)
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自由を奪うことで反発を生み(リアクタンス)
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興味をかき立ててしまう(カリギュラ効果)
と、望まない行動を促進してしまうのです。
もし「言っても伝わらない」とストレス感じたら、言い方をほんの少し肯定的に変えてみることから始めてみませんか?